タトゥーマシン選びの重要項目「ストローク(Stroke)」

2025.11.14

タトゥーマシンを選ぶうえで、必ず理解しておきたいのが「ストローク(Stroke)」です。
ストロークは仕上がりのクオリティ、肌への負担、そして作業のしやすさに直結するため、自分のスタイルに合った長さを選ぶことが非常に重要です。

この記事では、ストロークの基礎から、作風に合わせた最適な選び方までを解説します。

■ ストローク(Stroke)とは?
ストロークとは**「ニードルが1往復する際に移動する距離(振れ幅)」**のことです。

コイルマシンの場合: アーマチュアバーが上下に動く距離
ロータリーマシンの場合: カムの回転によってニードルバーが前後する距離

数値(mm)が大きいほど、ニードルは大きく前後します。
=1ストロークあたりの運動量が増え、パワー感が強くなります。

【重要】ストロークと「ニードル深さ」は別物

ストローク: マシン内部での“往復移動距離”
ニードル深さ: グリップ調整で決める、実際に皮膚へ刺さる“突出量”

この2つを混同すると適切なセッティングができないため、明確に区別して覚えましょう。

■ ストローク長で変わる3つのポイント
ストロークの長さは、主に以下の要素に影響を与えます。

① 打ち込みの強さ(ヒット感・パンチ力) ストロークが長いほど、ニードルが加速して肌に当たるため、パンチ力(突き刺す力)が強くなります。 硬い皮膚や太いラインでもしっかりとインクを押し込めます。 逆にストロークが短いと、当たりが柔らかくなり、肌への負担が減ります。

② インクの吸い上げと排出

長ストローク: 針がチップの中にしっかり戻るため、インクを十分に吸い上げ、吐出量も多くなります。
短ストローク: 針の戻りが浅いため、粘度の高いインクだと吸い上げが悪くなる場合があります。

③ コントロールの難易度 長いストロークはパワーがある分、深さのコントロールを誤ると「ブロウアウト(滲み)」の原因になりやすいです。 短いストロークは皮膚への当たりが優しいため、何度も重ねる作業(レイヤリング)でも肌ダメージを抑えられます。


※この図は、針の出し代をストローク幅の「中央」に設定した状態です。実際には針を長く出す(OUTを増やす)と、その分チューブ内への戻り(IN)は浅くなります。

■ ストローク別・おすすめ用途
自分の「作風」に合わせて選ぶのが鉄則です。

◆ 長ストローク(4.0mm〜) 向いている作業:太いライニング/カラーパッキング/ドットワーク

・強いヒット感で、一発でインクが入る
・アメリカントラディショナルや和彫りのラインに最適

注意点: パワーが強いため、繊細なぼかしには不向き。扱いには慣れが必要。

◆ 標準ストローク(3.0〜3.5mm) 向いている作業:オールラウンド(ライン・シェード・カラー)

・ラインも塗りもバランス良く対応できる基準サイズ
・・リアリスティックやブラック&グレーにも幅広く対応可能
・最初の1台や、迷った時の選択肢として最適

◆ 短ストローク(1.8〜2.5mm) 向いている作業:ソフトシェーディング/繊細なブラック&グレー

・タッチが非常に軽く、何度も重ねて彫るスタイル向き
・薄い皮膚や細かいディテールを傷つけずに表現できる

注意点: パワーが優しいため、太いラインを引こうとすると針が引っかかったり、インクが入らなかったりする可能性があります。

■ まとめ
ストローク選びは、あなたの「表現したいタトゥー」によって決まります。

バシッと太い線を引くなら → 長め(4.0mm〜)

なんでもこなす万能型なら → 標準(3.5mm前後)

ふわっとした淡いぼかしなら → 短め(2.5mm以下)

マシンのスペック表を見る際は、ぜひこの「ストローク」に注目して、ベストな相棒を見つけてください。

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